COLUMN

18歳からの漫画の描き方

vol.26

持ち込みの鉄則

ただ、私は1つみなさんにご忠告というとおこがましいのですが、持ち込みの鉄則をお伝えします。それは、「褒められようと思って持ち込まない」です。私たちは、作品を仕上げると自分でダメな部分もわかるでしょうが、どうしても「褒められたい」「面白いと言ってもらいたい」という気持ちになります。もちろん、それは当たり前です。創作者は、どこまで行っても褒められたい生き物ですし、読者に面白いと言ってもらいたい。しかし、編集者はプロの方々です。普段、プロの漫画家さんと掲載・連載ベースで打ち合わせもしていますし、原稿のやり取りもしています。
そのようなプロの編集者の方に、「文句なく面白い!」と言ってもらうのは、やはりかなり難しいことです。それに、下手にそういう原稿ができてしまうと、それベースで話が進むので、次回作からが大変です。私もよく生徒さんの原稿を読みますが、今目の前にいる作者の方が、原稿を褒めて欲しがっているか、真剣に「講評」して欲しがっているかは、わかります。私の場合、仕事のメインは生徒さんを励まし、やる気になってもらい、原稿を仕上げることなので、褒めて欲しそうな方には、基本褒めます。もちろん、デビューがかかっていたり、「この作品で賞を取りたい」という方には自分なりのダメ出しもしますが。

プロの編集者さんたちは、もちろん新人を発掘し、育成をするのもお仕事ですが、育成に特化した存在ではありません。中には、度を越えたダメ出しをされる方もいます。
私たちは、まずは、「編集者に褒めてもらおう」という気持ちを捨てましょう。そして、「自分の実力は発揮した。けれど、きっとこの原稿は不完全なものだ。しかし、自分ではどこが不完全かはっきりわからないので、編集者の方に聞いてみよう」ぐらいの気持ちで持ち込みに臨むとよいと思います。

例えば、「私としてはこういう意図でイントロを描き、読者に感情移入をしてもらおうとしたのだが、それは成功しているか」。例えば、「今回のテーマはこれだったのだが、それは伝わったか。共感していただけたか」。例えば、「主人公やヒロインは魅力的に描けているか」。私も生徒さんにアドバイスするときに、上記のように具体的に「これが聞きたい」というものが先方にあると、アドバイスしやすいです。「残念ながら感情移入はできませんでした。何故ならばね、」という具合いに、何がダメで感情移入ができないかを具体的かつ建設的にアドバイスできるからです。
みなさんもまた、そういう風にアドバイスされた方が自分の何がダメだったかを理解しやすいのではないかと思います。
そうしていただいたアドバイスを、次の原稿に生かそうとする。そして実際に生かし、上手になる。きっと編集者さんは、そういう漫画家志望者が大好きなはずです。そういう作者と編集者さんの関係は、とてもとても良いものになると思います。

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